舟漕ぎ運動:左半身の魂氣は陰の陽(小手返しの手)で母指先は地を指して前方に振り出す。右半身は掌に魂氣を包んで蓋をした母指先を前方に向けて差し出す、更に左半身で陽の陰。魄氣は陽と陰の反復。入り身運動の様に送り足、残心の姿勢をとらない。
陽の魄氣は魄氣三要素の中でのほんの一瞬に過ぎない。その形自体に静的意義は無い。正面を打ち込む、あるいは突く瞬間の動的機能を裏付ける形であり、必ず半身で腰が入っていなければならない。前の下腿が垂直に立ち上半身を腰から直立させ、後ろの伸展した足は体幹軸を前方に押し進めようとする圧力を単に引き止める支えではなく、腰の中心(臍下丹田)を結果的に前下方へひき止める力を作り出すための姿勢である。本来は一瞬のうちに連なる送り足と残心を、ここではあえて含めず歩幅をとったままである。
陰の魄氣は剣を振りかぶって(あるいは杖を巡らせて)後方の足に体重をかけて正面に腰を向けた状態であり、前の足先は地に触れているだけで前後左右自在に方向を定めて重心を移すことができる。ただし、舟漕ぎ運動での足先は前方向に限りしかも接点は固定している。このとき必ず両手は陰の陰(二教の手)で丹田から側腹に結ぶ。無制限に続けられる姿勢ではない。
転換の魄氣はこれにほぼ一致するが前方の足先を軸足方向に引きつける動作が伴う。魂氣は軸足側を腰の後ろに陰、他側は陽の陽である。正しく行われる舟漕ぎ運動こそ合気道の精髄である。
上体の軸は常に垂直で魄氣の陽陰とともに前後に倒さない。魄氣の陰陽における魂氣(上肢)の直線的な巡りに関連して、両肩を結ぶ線は剣線に対してほぼ45度の振れが必須である。前述の様に、丹田(腰)の振れはこれとは異なり、水平方向のみならず腰の縦軸(仙骨の縦軸)が脊柱に対して前方に角度を取って開く必要がある。このことを腰が入ると表現している。田中万川師範はこの魄氣の陽に相当した姿勢を三本の足で立つと指導された。
坐技片手取り呼吸法:内巡り昇氣の形から外下方(母指の反り方向)へ陽の陽。外巡りから脇を閉めると同時に陽の陽で受けの中心へ・受けが他方の手を後ろに着いてから入り身運動(受けは取りの内側に俯せで受け身)。
坐技両手取り呼吸法:一方は外下方へ陽の陽、他方は降氣の形から手首を外に廻して母指を前に向けてから(受けの脇が開いて腰が浮く)脇を開いて(広義の陽)受けの中心に陽の陰。手が離れると呼吸投げ。
坐技正面打ち一教表:陽でも陰でもない陽の魂氣を上段に示すことで受けの手刀を誘う。*裏は受けの手刀先手に対し陰の陰で合わせて対側を陽の陰。
立技正面打ち相打ち:受けの正面振りかぶりに合わせて直突き・対側の手を前に振込み逆半身(外)入り身転換。普段の稽古では横面打ち・入り身転換が一般的。
*残心で丹田に結ぶと受けは取りの足下に落ちるが、この技では前方に突き放すため大きく前受け身で取りから離れる。諸手取り外巡り二教投げ(入り身投げ)と同様。
【2024/1/3 禊 について修正加筆す】
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