17. 構え無しの合気剣 生成化育のタイトル 2023/5/4より再掲
小林裕和師範による「構え無しの合気剣」
1989年(平成元年)神戸大学体育会合気道部創部25周年記念行事で小林裕和師範が指導された。その冒頭が合気道の核心〝構え無し〟の合気剣についてである。
また、1991年に師範がイタリアで指導された時の動画(Scuola Aikido Daniele Pontiダニエレ・ポンテイ合気道学校のホームページ内)では、Giampietro Savegnago(Piero)ジャンピエトロ サヴェニャーゴ(ピエロ)師範が通訳しており、そこでは英語に翻訳した字幕を読むことができる。
括弧内に筆者の和訳と追記を添えた。なお、植芝盛平開祖の語録『合気神髄』から開祖の言葉を締め括りとして紹介する。
小林裕和師範:
(剣対剣で)相手が攻撃してくる機会を妨げるな。
相手に体を開け(構えを無くして正対する:真中を与えよ)。
もし防御の構え(互いに中段)をとれば相手に攻撃の機会を与えないことになる。そのままでは入り身で剣が届くほどに間合いを詰めることができない。
互いに構えると互いが安全な間合いであるから、入り身を行うためには相手の構えを破らなければならない。構えたなら相手に入り身をしようにも間合いが遠くなる。
しかし、もし取りが構えなければ、受けは取りの剣の分だけ近づき、取りにとっては間合いを詰めたも同然である。相手に間合を詰めさせ、その攻撃を外すと同時に撃てば、ずっと速い。一動作で済む(攻防一体)。相手の攻撃を受け流すと時間がかかる。かわすことと入ることが同時の方が速い(合気の剣)。
相手の攻撃が予測できれば尚更良い。(構えずに真中を与えたとき)相手が間合いを詰めて剣が動いた瞬間、入り身をしなければならない。
相手の構えをどうしたら破れるかということは考えるべきでない。(構えを無くした直後に相手が剣で間合いを詰めてくるとき)入り身の最適時を直感で読み解き、相手の動作を予測する鍛錬こそが必要である。
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小林裕和師範の 教えと開祖の言葉
構え無しとは、左右片寄りのない足で立つ、つまり開祖のいわゆる〝天の浮橋に立ち、天地の気に気結びする〟禊の姿勢で真中を与えることである。正対して剣を構えると真中を閉じてしまうが、剣を大きく振りかぶるか、あるいは体側に置くと胸・真中を開くことになる。
さて、真中を与えてから軸足を作る転換により非軸足先は剣線を外して軸足の前に置くと、開祖のいわゆる〝吾勝〟である。鳥船の陰の魄気に相当し、半身であるが上体、目付は正対する。ただし、剣線に対して90度転換しており相手を見ない。
即座に軸足交代して後ろの非軸足を半歩進め、相手の真中を撃つ。剣素振りの陽の魂氣、〝正勝〟である。魂氣に合わせて進めた非軸足先は地に置かれるのみで、足腰上体は一重身の半身であり体軸は不動である。
さらに鳥船の魄気の陽を経て軸足交代と継ぎ足で入り身一足となり、徒手であれば左右の魂氣が一つになって初めて受けの力のおよぶ範囲へ体軸が入る。〝勝速日〟である。いわゆる残心の姿に相当する。
これらは松竹梅の剣の一法であるが、この剣先の軌跡を術理として、相打ちとならない操法が合気の剣である。