——— 正勝吾勝と魄気の陽と勝速日
正勝吾勝から下段に魂氣を与えて片手取りに、植芝吉祥丸道主の全身転換で、小林裕和師範のいわゆる三面に開くと足先が外を指したまま同側の手首を受けに取らせており、同側の鼠蹊上部に置かれた其の魂気の母指先が足先と同方向を指している。
そこで、踵を踏んで軸として足先を内に半回転すると同側の魂氣は陽の陽から鼠蹊部に巡って陰の陽で下丹田に結ぶ。したがって受けの手は取りの魄気に結んでその前方に相半身で進み出る。取りは半身を転じて植芝吉祥丸道主のいわゆる上半身転換で後方へ体を転換する。これは入り身転換ではない。
全身転換には三面に開く変化と、入り身に続く上半身転換から前方の非軸足を一歩後方に開く転換がある。しかし、いずれにしても転換は正勝吾勝で始まり、魄気の陽を介して正勝吾勝つまり魄気の陰に終わる。一方、入り身と転換に内在した体勢こそは魄気の陽である。
さらに、勝速日とは正勝吾勝から魄気の陽を経て継ぎ足によって五体が一本の体軸となる瞬間であり、入り身一足に他ならず、開祖が〝神の御柱〟(『合気神髄』p131)と喩えたものであろう。