*神氣館【 高槻市 天神町道場 】               Shinkikan aikido tenjinmachi-dojo (公財)合気会公認道場                                   Takatsuki-city Osaka JAPAN         大阪府合気道連盟加盟道場                                       開祖植芝盛平の言葉と思いを動作する basic techniques from words and thoughts of the Founder, Morihei Ueshiba        不動の軸足に陰の魂気:〝吾勝〟  非軸足と魂の比礼振り:〝正勝〟        〝この左、右の気結びがはじめ成就すれば、後は自由自在に出来るようになる〟:軸足交代         二つはこんで一と足すすむ・入り身一足と、体軸に与る両手の巡り:〝左右一つに勝速日、業の実を生む〟       〝正勝吾勝〟で剣素振り 合気の剣は〝勝速日〟 〝正勝、吾勝、勝速日とは武産合気ということであります〟                      「魄阿吽の理念力」のタイトルに 1. 合気道指導演武 2025/1/1                       2. 合気道では何故剣素振りを欠かすことができないのか 2025/1/2 「令和7年のおしらせ」に1月の稽古予定                         稽古の記録 2010/8/15〜2024/12/29

1. 合気道指導演武

 稽古の場では〝筆につくす〟ことはできない。

とは言え、説明ずくめでは稽古にならない。

〝言ぶれせずに悟り行へ〟と開祖は道歌で明言された。

この場合の〝悟り〟は開祖の言葉と思いと動作を三位一体で皆が共有して、と解釈するべきだろう。

 基本動作や技の名称や分類は吉祥丸二代道主が整えられたという。

合気道の言葉と思いと動作は開祖から二代、三代道主へ、そして直弟子の師範を通して脈々と継承されている。

                                                                                                 2025/1/1

2. 合気道では何故剣素振りを欠かすことができないのか

吉祥丸道主の『合氣道』(光和堂)は、〝合気道に対する混乱した概念を改めるよう〟〝極く初心者向きに合気道の何たるかを書いた〟著作である。〝とにかく合気道として世に問うたものは最初のもの〟である、と昭和32年7月に前書きとして記されている。

 

基本動作

そこでは基本動作と基本技法に分けて解説されており、基本動作として、例えば合気道独特の「捌き」「気の流れ」「力の使い方」などを挙げている。

「捌き」には手、足、体の捌きがあり、〝中心の移動により自己の体を捌き、相手を捌いていく〟つまり、〝中心を持って円転滑脱に体を動かしていくこと〟である。

「気の流れ」とは〝機に応じて〟〝自然に無意識に出てこなくてはならぬ〟〝相手の動きを正しく察知することができる〟〝直覚力〟とされている。合氣道の練習においては、前述の捌きとともに重要な一面を担っている、と明言される(p93)。

「力の使い方」では、〝自然に、敏活であってしかも素直に、あたかもなだらかな螺旋状円運動のごとき〟〝正しい力の入れ方を理解しなければ〟ならない、と。

 

呼吸法と禊

次に基本技法として、転換法、基本投げ技、基本固め技、呼吸法の四大部類に分けられた。呼吸法とは、呼吸力養成法であり、気の力のことを呼吸力と呼んでいる。また、呼吸とは、生理的な呼吸にとどまらず〝からだ全体で、天地とともに呼吸することを意味する〟と。そのような呼吸が気力を〝臨機応変たくまずして自然に出し得る〟と説かれている。そして〝自然力の充分なる集中発揮が可能となる〟方法を呼吸法と呼んでいる(p152)。

〝天地とともに呼吸する〟とは、天の浮橋に立ち(道場に立ち)天地の気に気結びする、と開祖の教えにある、稽古のはじめに行う禊の所作であろう。天から心のたましい魂の気を吸気で掌に受け、地からは肉体のたましい魄の気を足底から腰に受ける。それらは拍手とともに呼気によって下丹田で一つになり、肚ができると思うことにする。開祖は〝立ったならば自分が統一していなければなりません。空気を媒介として統一になるのです。呼吸(いき)です〟(『合気神髄』p101)と言われる。

 

鳥船の足腰

呼吸力を発揮する動作に移ると、まず開祖の鳥船の行である。魂氣の珠を包んだ両手が下丹田の両脇に置かれ、右足を軸として直立する体軸を作って〝吾勝〟、左足は非軸足で軽く半歩出して〝正勝〟と呼ぶ(同p6970)。

魂氣を包んだ手は母指先で地を指したまま吸気に合わせて前方へ振り出され、同時に軸足を伸展して非軸足は踏みつめ、下腿が直立する。体軸を失って体幹軸が直立し、両足の間に移動する。この姿勢を魄気の陽と呼ぶことにする。

吸気相の終末では静止することなく、つまり息を止めることなく、母指を除く弛緩屈曲した指が下丹田を指して呼気相で巡る。同時に体幹軸も同期して元に戻っていくが、足捌きとしては一旦伸展した足が弛緩屈曲して軸足に戻ることとなる。そこで体軸を再び確立して吾勝となるには、下丹田に巡った魂気が魄気と結ばなければならない。その体捌きは魄気の陰ということになる。陽でホーと振り込み突き、陰でイェイと下丹田に結ぶ。

 

鳥船の手に魂の比礼振りが起こる仕組み

小林裕和師範の鳥船では非軸足側の手はイェイで下丹田に巡るやいなや側腹をすり抜けて軸足の後方へ弛緩して振れる。対側の手もそれに同期して下丹田で魂氣を体軸に預けると同時に後方へ自然に振り下ろされる。そこから吸気で前方に魂氣を両手で振り込むと、軸足はそれに合わせて伸展され、体捌きと足捌きは魄気の陽となる。つまり、魄気の陰で魂氣と魄気の結びにより体軸が確立するのであるが、転換や回転の軸にならなければ必ずしも魂気が丹田・体幹軸に密着し続ける必要はないということだ。

魂氣を包んだ両手が下丹田に触れた瞬間すべてを軸足に響かせて体軸とともに地に結んで〝土台となる〟(同p105)。後ろに振れた両手は魄気・体軸から解脱して、〝魂の比礼振り〟(同p108)に喩えられた手であろう。吸気に移行すると魂氣を掌に包みながら前方に振り込み突き近似で発するが、母指先は地を指したままであって魂氣を空気中に放つことはない。

これも開祖の〝心の持ちよう〟(同p67)であり、動作の成立を裏打ちするのみならず核心を成す思いであると言って良いだろう。

 

単独動作の振りかぶり呼吸法と剣素振り

立ち技相対動作の両手取り振りかぶり呼吸法と鳥船は思いと動作が通底するに違いない。魄気の陽で両手刀を差し出し、受けが第一指間で前腕橈側(手刀の峰)を上から押さえ込もうとする。呼気で足捌きと体捌きによって魄気の陰・正勝吾勝とし、両肘頭が下丹田の脇に軽く触れて弾むと同時に両手の回内と母指の反りによる橈屈と背屈で母指先が中丹田から人中を指す。この瞬間、前腕に受ける魄力がすべて項から背、腰仙部を経て軸足の魄気に結んで一体になった、と思うことにする。そのとき尺側前腕から小指球では〝身の軽さを得る〟(同p105)ことになり、魂の比礼振りが起こって臍下丹田から魂気を発する手刀の刃となる。

手刀の峰には下丹田から母指先を通って背側の体軸に流れる魄氣、刃には下丹田から小指球を通って刃先から〝蕩々と流れる水の如く断続のない、調子の整った、生き生きした〟(『合氣道』p152)魂気の力が発せられる。

行いは言葉と思いと動作の三位一体であり、思いの裏打ち無き動作、あるいは動作の伴わない思いは行いとはなり得ないことを肝に命ずるべきである。

以上の動作で剣を用いれば、入り身一足・勝速日で突いて、呼気相の陰の魄気で体軸を吾勝に戻すと同時に手の魂気は肘頭を通して下丹田に巡り、腋が閉じて体軸の魄気と結ぶことで肘頭は体軸から解脱する。正勝である。まさに鳥船と近似するところである。

そこでは手首が軽く回内・橈屈、背屈で身の軽さを得て母指先の反りに合わせて発露する魂氣は上丹田に向かい体軸の背面を通って軸足に結び、吾勝である。上段に振りかぶる体勢に他ならない。非軸足先と剣先は体軸から解かれて呼気の終末でありながら、魂氣の兆が正勝で天を指している。

吸気で母指・示指先に同期して第一指間を通して剣先から前方へ一気に魂氣を発し、同時に非軸足先はさらに半歩進めると正面打ち素振りであり、吾勝・正勝つまり魄気の陰を維持する。小林裕和師範の剣振りかぶり面打ち素振りは非軸足を踏み詰めることがない。

さらに、面打ちの素振りから魄気の陽に進めて入り身一足では勝速日となり、初めて合気の剣の残心に繋がる。

 

まとめ 

下丹田の魄気を瞬時に解脱して〝魂気すなわち手〟(『合気神髄』p181)の母指先が、地を指したまま軸足後方に垂れる鳥船と、人中を指して体軸の背面に結んで吾勝に小指と尺側前腕が正勝で前上方に発せられる面打ち振りかぶり呼吸法の近似性をまず認識すべきであろう。

さらに、振りかぶり面打ち剣素振りと入り身一足の面打ち残心は片手取りや両手取り呼吸法の原型であり、それゆえに原型たる剣操法でなければ意味が無い。剣術諸派や居合切りの所作に、ここまで記した呼吸法の要素を認めて選択しているならまだしも。

さて、呼吸法には剣を上丹田に巡らせて切り返し面打ちとする術技に由来する動作もある。軸足側の手で巡る切り返しは振りかぶりと大きく異なる動作である。それについては稿を改めて論じることとしたい。

                                2025/1/2

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